ゆめうつつ、無限




 夢の中の俺は幼く、兄さんの温かい両腕に包まれて笑っていた。
「ヴェスト、今日はずーっと一緒だ。仕事は全部休み。一日中おまえと一緒にいてやれるぜ!」
「ほんとうに?」
「ああ、世界で一番可愛い俺のヴェスト! 好きなだけキスしてやるし、好きなだけ抱きしめてやるからな」
 うれしい。うれしい、嬉しい!!
 兄さんはずっと俺のことだけ見て、俺のことだけその真っ赤な瞳に映して、俺だけを抱きしめてくれる。世界に、こんなに幸せなことって存在するのかと疑わしくなるほど、そのときの俺は幸せだった。
 兄さんはふわふわと柔らかいキスをたくさんくれて、求めれば何でも応えてくれた。
「兄さん、だいすき」
「ああ、俺もヴェストのことが大好きだぜ」
「その……キス、をしてほしいんだ」
「いくらでもしてやるよ」
「どこにもいかないで。俺だけ見て、俺だけ愛してくれ……」
「当たり前だろ。俺はおまえだけ見てるよ、どこかに行くはずねえだろ。おまえだけを愛してるんだから」
 兄さんは膝の上に乗せた俺をぎゅうぎゅうに抱きしめてくれた。
 夢は、本当に幸せだった。


 かたん。小さな物音に、俺は意識を覚醒させた。
 夢を見ていた。幼い頃の夢。俺がまだ兄さんに庇護され、俺の世界には兄さんしかいなかった頃の夢だ。今はもう兄さんの背丈を追い越し、腕力も国としての力もすべて彼を追い抜かしたというのに、未だに俺はどこか兄さんに憧れている。もうあまり口に出す機会は減ったが、今でも俺は兄さんが大好きだと断言できる。
 幼い頃から兄さんだけを見てきた俺の世界は、とっくに兄さんなしでは存在することすらできなくなっていた。それに気付いたとき、俺は自分自身のあまりの脆さに愕然とし、そして歓喜した。
 ああ、やはり俺には兄さんが必要なのだ。銀の髪、罪のような赤い瞳、粗野な物言いに隠れた優しい心、すべてが俺に必要だった。……俺のものだ。
 ぼんやりとした意識が浮上し、俺は先程の物音の正体が気になってきた。敵意や殺意は感じられなかったから、害があるとは思えないが一応調べないと気がすまない程度には気になっていた。
 仕方なくベッドから降りて自室のドアを開け、部屋を出る。もしもに備え、銃を携えることと気配を消すことだけは一応しておいた。
 足音を忍ばせてしばらく廊下を歩いていると、かすかに人の話し声がした。聞き覚えのある、俺よりも少しトーンが高いがよく似た声。
 ――にいさん。
 唇がほころび、おかえりと声に出そうとした瞬間、俺の体の全てが凍りついた。
 兄さんの横には、見たことも無い女性がいた。それも、ひどく親しげに兄さんの腕に腕を絡め、体重をかけている。美しい金色のロングヘアをたなびかせた清楚な印象を与える女性だった。
「ねえ、大丈夫? 弟さんと一緒に住んでるんでしょう?」
「あー平気平気。アイツ、今日は出張だとかで帰ってこないっつってたから」
「あは……悪いお兄さん」
 ああ、そういえば確かに今日は出張で帰れないと兄さんに伝えてあったっけ。しかし思ったよりもスムーズに仕事は進み、結局いつもと同じ時間に帰ってこられたのだと、兄さんには言っていなかった。
 帰ってきたときに少しでも驚けばいいと思ってわざと連絡を入れなかったのだが、兄さんのほうが帰ってこないという妙な事態になったのだったか。しかし兄の放浪癖はいつものことで、スペインやフランスあたりの悪友たちと飲みに行ったりしているときは日付が変わっても帰ってこないことはしょっちゅうだったから気にはしていなかった。
 しかし、ああ、そうか。今日帰りが遅かったのは、そういうことか。
「ヴェストがいたら、女なんて連れ込めねえよ」
 けたけたと笑い、兄さんは女性を連れて自分の部屋へと消えていった。
 兄と女性の影が消えた廊下で、俺はしばらく立ち尽くしていた。今の光景を、信じたくなかった。兄さんが見知らぬ女性の腰を抱き、自分を邪魔者扱いしていたなんて、認めたくなかった。
 冷えた廊下に佇んでいると、薄くドアが開いて光の漏れている部屋から、耳を塞ぎたくなるような音が聞こえてきた。
「あ、ぁんっ! あ、あーっ、っは、きもちいい……あ、はっん、あぁっ」
 甲高くて甘ったるい、女性の声。俺も若い男で、そういったことに興味が無いわけではなかった。しかし身内の、何よりも、敬愛する兄のそういった関係を知りたくなんてなかった。
 しかし俺の意思に反して足が動き、薄く開いたドアの隙間を視界に入れてしまうのはどうしてだろう。罪悪感と、なぜか兄に裏切られたような理不尽な思いに身を焦がされながら俺の目が映したのは、兄がにたにたと下卑た笑いを浮かべながら女性を組み敷いている姿だった。
 予想していなかったわけではない。だが、やはり現実として目の当たりにするとダメージは相当なものだった。
「は、ッ……ぁあ、あ、っはは……」
「んあぁっ、あ、っは……あ、あッ!」
 大きく割り開かれた女性の足の間に兄さんが入り込み、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて赤黒く勃起したペニスが女性の中をぐずぐずと犯している。女性はだらしなく口を開いて兄さんに与えられる快楽に酔いしれ、兄さんは女性を征服する愉悦に陶酔しているようだった。
 気分が悪い。吐き気がする。眩暈も、動悸も激しくて、呼吸がままならない。頭が割れそうに痛い。誰か、助けてくれ。

 そこからは、あまり覚えていない。
 気付けば俺は自室に戻っており、ベッドの中で頭を抱えて泣いていた。絞れそうなほどシーツが濡れていたということは、相当な時間泣いていたのだろう。枕を噛んで声を殺し、ぼたぼたと勝手に流れていく涙をまるで他人事のように見つめていた。
 ふと下半身に違和感を覚え、恐る恐る手を伸ばしてみる。そこは、少し刺激を与えればすぐに弾けてしまいそうなほどに勃起していた。情け無いと思うと同時に、不思議な気分だった。
 俺は泣きながら下着の中に手を忍ばせ、ぎゅっと目を瞑ってそこをゆっくりと擦る。漏れそうになる声は、泣き声と同じく枕に噛み付くことで殺した。
「ッふ、ぅぐ……ふーッ、う゛っ、ん゛ぅ…ッ!」
 ズボンと下着をずり下げて手を激しく上下させると、俺はあっけなく手のひらに精液を放った。べちゃ、と汚らしく射精した俺を襲うのは、まぶたの裏に焼きついた先程の光景。
 兄さんが女性を抱いていた。兄さんの勃起した性器が女性を突き上げて揺さぶり、ぐちゃぐちゃといやらしい音で犯す。興奮気味に荒くなっていた吐息、やや赤くなった目元。熱くてとけてしまいそうな吐息の混じった声で名前を呼ばれたら、どれほど気持ちいいのだろう。あの手で擦られて、あの傷だらけの腕に抱かれて、あの真っ赤な瞳に乱れた姿を映される。
 そう考えただけで俺の性器は再びかたく腫れあがり、先程吐き出した精液に濡れた手でまたそこを擦って快感を追い始めてしまった。
「う゛ッ、ぐ……ん、ッう…にい、さ……んッ!」
 兄さんの姿を思い浮かべ、兄さんに抱かれる自分を想像し、兄さんの名を呼んだ瞬間に俺は二度目の絶頂を迎える。
 そうして、絶望した。
 俺が兄に抱いてしまった醜い欲望と情動、どうしようもない恋情に気付いてしまった。そして、その気持ちに気付いた途端に俺のこの感情には終止符が打たれてしまう。なんとも滑稽な話だ。
「っは、はは……あはははは、はっ、ははははは!」
 頭まで布団を被り、むせ返るような饐えた精液の臭いにまみれながら、俺は少しだけ大きな声で笑った。
 この声に兄さんが気付いてあの女性を放り出してくれればいいとひどく醜い考えも浮かんだが、それは叶わなかった。どうせ、あのうるさいくらいの甲高い声にまみれて、俺の低い声など聞こえないのだろう。
 流れ続ける涙は、とても醜いものに感じられた。


 結局、俺はあれから気を失うようにして眠ってしまったらしい。
 目が覚めると、俺は手のひらとシーツに乾いてがびがびになった精液を付着させたまま、ズボンと下着が少しずれたままという不恰好な姿だった。渇いた笑いが声帯を震わせ、俺は溜息をついた。
 俺の精液で汚れてしまったシーツを乱暴に外し、手のひらを適当に拭ってから力任せに白い布を引き裂いた。布を引き裂く音は、女の悲鳴にも虫の鳴き声にも聞こえた。
 ただの無残な布と化したシーツを丸めてゴミ箱に放り込み、陰鬱に湿った空気の蔓延する部屋の窓を開けて太陽の光を招き入れる。生命の源の光がもう随分と高い位置に上っていることから、随分と寝ていたのだということを知った。時計を見れば、確かに既に昼近い時刻を指していた。 あの汚らしく引き裂いたシーツを処分しようとしたところで不意にドアをノックする音が聞こえ、俺は窓辺から離れずに返事をする。入っていいか、と問われ、逡巡した挙句に仕方なくjaと返した。
「ヴェスト、起きたのか?」
 光のもとで見る兄さんは、昨夜の面影など一切におわせたりしなかった。普段は早くに起きて忙しなく動き回っている弟が昼近くなっても起きてこないことを心配する兄の顔そのもので、むしろそのあまりにも普段どおり過ぎる表情に吐き気がした。
「ああ、すまない……。すこし、気分が悪くて」
「大丈夫かよ。それにしてもヴェスト、いつ帰ってきたんだ? 昨夜からいたのか?」
 俺を心配する素振りを見せながら、昨夜のことを聞いてくる辺り兄はずるい。そして、自分のことしか考えていないのだろうかと落胆した。
「……昨日は、夕方には家にいたんだ。仕事が思ったよりも早く済んだんだが、疲れてしまってな。夕食後すぐに寝てしまった。兄さんこそ、いつ帰ってきたんだ?」
 俺は元来、嘘は苦手な性格だったはずだ。しかし自分でも驚くほどすらすらと言葉が紡がれ、そんな俺の言葉を聞いた兄さんはどこか安堵したように目を細めた。
 俺が家にいると知り、兄さんは狼狽したのだろう。慌てて女性を家に帰したのかもしれない。そう考えると、少しだけ笑えたが表情には出さなかった。
 兄さんは妙なところで目敏いひとで、破かれてゴミ箱に押し込まれているシーツを見つけて俺に尋ねてきたが、俺は酔っていて破いてしまったとか何とか適当なことを言ったような気がする。それで騙しとおせたのかは疑問だが、兄さんが何も言ってこないのでそれでいいのだろう。兄さんと女性が交わっているところを見て、女性を自分に置き換えて自慰をして吐き出した精液で汚れてしまったからだなんて、言える訳が無い。
「……何か、顔色悪くねえか?」
 ふと顔を曇らせ、兄さんはひやりと冷たい手のひらで俺の額に触れた。純粋な、兄としての心遣いだが、突然の接触に俺の心臓がばかみたいに跳ねる。なんて気色悪いんだろう。
 熱はねえな、と少し安堵したような顔をする兄さん。慈しむように俺に触れる兄さん。しかし、その俺に触れている手が、昨夜は乱暴に女を貪っていたことを俺は知っている。柔らかく触れる指先が、ねっとりと蜜を滴らせる女の膣を掻き回して甘く乱していたのかと思うと、泣き出したくなった。
「どうした、やっぱりどっか痛いのか?」
「いや……平気だ。すまない」
 やんわりと兄さんの手を振り払い、足元に置いてあったゴミ袋を掴んだ。引き裂いたシーツが丸めて詰め込まれている袋はいびつに膨らみ、胎児を宿した女の腹にも見えた。ああ、俺が精子を出したから孕んでしまったのだろうか。くだらない。
 捨ててくる、と言い残して俺は部屋を出る。引きずるようにゴミ袋を運びながら、このままこの汚らわしい思いも丸めてゴミ袋に投げ入れてしまいたいと切に願った。しかしその願いは聞き入れられず、俺の頭は汚れたままだった。



『ぁあ、あーッ、は、あんっ、あは……あ、あぁッ!』
 小さなモニターからは、ひどく猥雑な声がこだまする。とろりと甘ったるい女性の声に辟易しながら、俺は一心不乱にモニターを眺めた。ベッドの上で腰をくねらせ喘ぐ女性と、その女性をベッドに押し付けて呼吸を乱している兄さんが映し出される四角い画面に見入っていた。
 これは確か、三日ほど前に俺が泊りがけで家を空けたときの映像だ。兄さんは日も暮れないうちから、豊満な胸を揺らす派手な女性を部屋に連れ込んでそういった行為に及んでいた。
 俺がこんなものを仕掛けているとも知らないで。
 画面の中で下品な声を上げながら喘ぐ女性と、はあはあとだらしない呼吸を漏らして腰を打ちつける兄さんを凝視しながら俺は笑いがこみ上げるのを抑え切れなかった。どうしようもない。滑稽だ。
 嘲るようなこの笑いは、おそらく俺自身に向けたものなのだろう。もう、良く分からないが。
「っく、は…ぁ、あ、ッ…う゛んッ……!」
 そうしてまた自慰に耽りながら、シーツを噛むことでこみ上げる笑いを殺した。ぐじゅぐじゅと下品に擦り上げる音は、まるで頭蓋を開いて脳漿を直接掻き混ぜているような気分にさせた。血と肉の集まりを乱暴に愛撫して、俺は己の中に潜む奇妙な妄想にとり憑かれた。
 妄想の中の俺は、まだ幼い子供だった。兄さんの庇護がなければすぐにでも消滅してしまう、脆く幼く小さな存在。
 にいさん、本当にそう声に出したかは定かではない。確かなのは、ぼんやりとした霞がかった頭の中の兄さんが幼い俺に優しく笑いかけてくれたこと。それだけだ。彼はゆったりと両手を広げ、俺を迎え入れる。力強い両腕が俺を抱きしめ、囁くのだ。あいしている、と。
「ァあ、あ、にいさ……にいさん、兄さん…ッ」
 そのいとしい兄さんが、鋭いナイフを取り出しておもむろに俺の腹に突きたてる。俺は一瞬呼吸が止まり、ナイフが抜けていくと同時に俺の腹からじわじわと血が溢れていく。止まらない。俺も兄さんも、それを恍惚と見守った。
 ――ああヴェストおまえの血が流れてるぜきれいだな愛しいヴェスト俺だけの可愛いヴェスト。
「ああ、ながれ……てる、ッ、血が、ぁ……俺の血、が兄さん…ぁう゛、ぅ…」
 妄想の中の実体を持たない兄さんがうっとりと俺に微笑みかけ、俺の血が付着したナイフをべろりと赤い舌で舐めた。真っ直ぐに刃を舐めたため、ばっくりと兄さんの舌が裂ける。蛇のように二股に割れた兄さんの舌からどろどろと塊のような血が流れていくのを想像して、俺は手のひらに白い体液を吐き出した。
 タイミングよく、画面の中の兄さんも射精したようで、低く呻きながらびくびくと腰を震わせていた。なんていやらしい姿なのだろう。下品で、淫らで、ぞくぞくするほどに美しい兄さん。
『っは、はー……っ、はあ、ァ……』
 呼吸を乱して前髪を汗で濡らす兄さんを、美術館の彫刻を眺めるようにじっと見つめる。俺は躊躇いなく右手を口元に持って来て、べろりと手のひらを舐めた。たった今吐き出されたばかりのこの精液は兄さんのものだ。そう思い込んで、俺はうっとりと舌を伸ばして汚れた手のひらを舐め回した。
 ぴちゃぴちゃと汚らしい音を立てて精液を啜る。にいさん、にいさん、にいさん。マイナスに味覚と嗅覚を刺激され、吐きそうになりながら俺は自らの手のひらをしつこく舌で往復した。これはにいさんが出したものだ、兄さんが俺の手で気持ちよくなってしまったために吐き出された精液で、俺は今兄さんの命令で兄さんの精液を啜っているんだ。そう思い込むことで、ぐずぐずととろけそうなほどに腰が痺れた。
「あ、ぁ……は、んぅっ、う……あは、は…ははははは……っ!」
 画面を見つめ続ける俺の目から流れる涙が止まることはなかった。
 苦しかった。どうしてこんなに苦しいのかは分からなかったが、どうしようもなく胸と頭が痛くて死んでしまいそうだった。いっそこのまま心臓が千切れて死んでしまえば良かったのかもしれない。あんなにも素晴らしい兄さんの弟が、こんな男であることが申し訳なかった。

 胸焼けしそうなほどに甘く俺の欲望を叶える夢と、自己嫌悪に苛まれる現実とを行き来する日々は、そうして流れていった。
 ある日は現実で兄と他愛ない会話を楽しみ、その晩に夢の中で俺は兄に抱かれた。そうして目覚め、兄と共に仕事をして、また手酷く扱われ抱かれる夢を見る。
 時折泊りがけで家を留守にし、帰ってから小さな機械の映像をチェックすると、三回に一回程度の割合で兄が女性を連れ込んでいることが分かった。兄が女性を抱く姿を眺めて自分を慰める滑稽な行為に、泣きそうになった。
 おぞましい妄想を抱いて日々を過ごす罪悪感に胸が詰まりそうになりながらも、どこかその背徳にぞくぞくとした何かを感じている自分が醜い生き物にしか感じられなかった。


『浅ましいヴェスト。おまえみたいな弟を持って、俺は不幸だよ』
「……え、?」
 ふと顔を上げ、兄の姿を確認する。向かい合った机の向こう側、眠そうにしながらもペンを走らせている兄さんは俺に何かを言った様子は無い。
 しかし俺には確かに兄さんの声が聞こえた。それも、俺の浅ましくておぞましい夢の中でしか言わないような言葉を吐く、兄さんの声が。
 俺の零した問いかけに兄さんも顔をあげ、どうした? と首をかしげた。
「あ、いや……今、何か言ったか?」
「俺が? 何も言ってねえけど……ヴェスト、大丈夫か? 疲れてんじゃねえの?」
『愛してるぜ、俺だけの可愛いヴェスト』
 訝しげな顔で俺を覗き込んでくる兄さんの声が、二重に聞こえた。
 ああ、どうやら俺は本当におかしくなってしまったようだ。
「ここしばらく働きづめだったからな、仕方ねえか。つらいなら少し休んどけよ」
『いやらしいな。俺に見られただけで勃起してんじゃねえの? っはは、へんたい』
 今、目の前で笑う兄さんは、夢なのかそれとも現実なのか。俺にはもう、どちらなのか分からなかった。
 無意識のうちに、俺の唇がいびつにつりあがった。





end.


























































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 オチぶっちぎりなのはいつものことです。
 気持ち悪い話を目指したんですが玉砕した気しかしません。






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