夜の帳に紅い愛
白いベッドの下、ドイツはいつも軍服の下に着ている黒いタンクトップ一枚という格好で跪いていた。その兄、プロイセンは普段のドイツと色違いの軍服を纏いズボンの前だけをだらしなく開いてベッドの縁に浅く腰掛け、弟が一心不乱に自分のものをくわえている姿を見下ろしている。
体の大きな弟が縮こまるようにして床に膝をつき、目尻にはうっすらと涙を溜めながらそれでも懸命にプロイセンのものに舌を這わせる光景に、自然と吐く息が熱くなった。
「ん、んぐっ……ンっ、んふ、ゥ……っ」
深くくわえ込み、唇で扱きながらずるずると吐き出す。はあ、と大きく息継ぎをするために開いた口は、とっくに唾液やら体液やらで濡れていた。
その唇を親指で撫でてやると、ドイツは心地良さそうに目を閉じる。そのままプロイセンの親指をかぷりとくわえ、そこにも唾液を絡ませた。プロイセンがドイツに食まれた指を引き抜くと、再びドイツはプロイセンのものを口内に飲み込んだ。
両手でプロイセンの性器をぐちぐちと扱きながら、先端に唇を触れさせ、軽く吸ってまた飲み込んだ。それに応えるように、ブーツを脱いだプロイセンの素足が、ドイツの股間に伸びてくる。つま先で弾くように蹴られると、大袈裟にびくんっ、と肩をすくませた。
「ヒっ……ィ、あっ!」
「俺の、舐めてるだけなのにこんなにして……はしたないぜ、ヴェスト」
「んっく、ぅ、…ふ、アっ」
尖らせた舌先で、根本から先端にかけて舐め上げる。開いた部分のくびれを唇で挟み、咀嚼するような動きでやわく揉むと先端から透明な体液がにじみ出てきた。
また深く喉の奥まで迎え入れられ、プロイセンはその刺激に背筋がぞくりと震えた。
足の親指と人差し指の間にドイツの性器の先をはさんで、ぐりぐりと踏んでやると弟は甘い声で鳴いた。その甘い悲鳴を含んだ唇に追い立てられ、プロイセンは上ずった声を上げる。
「っ、あー……っは、あ、…ヴェスト、もう出そう」
「んっ、ァ……は、出して、いい」
「……はっ、ッ…飲めるよな?」
目つきの悪い弟が上目遣い気味に見上げてきて、プロイセンの性器を口に含んだままこくんと頷いた。
左手を添えて、右手は垂れた袋にそっと触れる。人差し指で輪郭だけをなぞるように撫でられ、プロイセンは限界が近づくのを感じていた。腰が重い。ずくずくと疼くような甘い痺れと、どうしようもない嗜虐心ばかりが芽生える。
添えられた左手が上下に動き、くわえ込んだ唇はくびれから先端にかけてを扱く。穿るようにして舌先で鈴口を突付かれ、プロイセンの頭が快感に白く染まっていった。
「は、はっ……あ、あーっ、イく、いきそ……ヴェスト、ちゃんとぜんぶ飲め、よ」
「んっ、んん……ぁふ、ふ、っ」
「こぼしたら……っは、お仕置きするからな」
身を屈めて、ドイツの耳元で低く囁いた。ドイツは苦しそうに目尻に涙を溜めながら、頭を上下させてプロイセンの精を搾り出そうと無心になった。絡めた唾液ごと全部啜るように、きつく吸い上げた。
低く呻くような喘ぎがドイツの鼓膜をくすぐり、それと同時にプロイセンがドイツの頭を抱え込むように強く押さえつけた。口の中に、濁った液体が叩きつけられる。
ドイツは言われたとおりに、零さぬよう深くそれを飲み込む。けれどやはり質量の大きさと、溢れてくる苦い精液に苦しくなり、げほげほと咽こんで口を離してしまった。
びちゃ、と数滴。ドイツの頬にかかり、それが顎をつたって床に落ちた。ドイツは慌てて現在口の中にある精液を嚥下し、零れ落ちたものは床に這って舐め取った。床に這い蹲って精液を舐める弟の姿に、プロイセンはくらくらした。倒錯的で、背徳的で、どうしようもなく淫靡だった。
兄の命令に完璧に従えなかったことに、ドイツは泣きそうな顔をしていた。何のためらいもなく床を舐めたその唇を開き、プロイセンの尿道に残った精液も吸い上げて、こちらもやはり躊躇せず飲み込んだ。
縋るような瞳が、兄を見上げる。
プロイセンが無言で右手を差し出してやると、ドイツはその右手を両手で包み、恭しく手の甲にキスをしてからうっとりと頬をすり寄せた。
「可哀想なヴェスト。折角頑張ったのに、こぼれちまったなあ?」
「あ……す、すまない。だが、すべて……言われたとおり、すべて飲ん――」
「約束は約束だろ。俺はこぼすな、って言って、おまえはそれを了解したにもかかわらずこぼした。そうだろ?」
ぴしゃりとドイツの言葉を遮り、プロイセンは滅多に見せない柔らかな微笑を浮かべた。
「お仕置き、な」
にっこりと笑った口元が、ドイツの額に優しくキスを落とした。
ドイツが両手で包み込んでいたプロイセンの右手。プロイセンはそれを緩やかに振り払うと、そっと手のひらをドイツの左頬に触れさせる。愛しげにその頬をひと撫でして、右手が振り上げられた。
「叩くから、目ぇ瞑っとけ」
ぱしん、と乾いた音がした。頭の芯が揺れるような衝撃と、痛み。それから、同時にプロイセンに股間を強く踏みつけられた。つぶれそうなほどの痛みを与えられたのに。
「ンっ……ふ、ァ、あぁッ! は、……ぁ、あ、っ……!?」
ドイツは、己の体が信じられずに呆然とした。
刺激されていたものが、びくびくと震えてみっともなく吐精していた。兄の白い肌をした足が、白く汚い液体に穢された。
「っはは、はははは! なんだよヴェスト、おまえ、叩かれて踏まれただけでイッちまいやがったのか?」
苦痛を与えられただけで達してしまったドイツの浅ましい体を嘲笑うように、プロイセンが叩いたばかりのドイツの頬を抓る。左だけ醜く歪んだ、元より『美しい』や『可愛らしい』とは無縁の顔。ぎりぎりと爪を立てて抓ると、ドイツの顔はさらに泣きそうに歪んだ。
「可愛い可愛い俺の弟が、こんなド変態だなんてな! ……ああ、泣くなよヴェスト。本当におまえは可愛いな」
自尊心や矜持の崩壊にとうとう耐えられなくなったドイツが、ギリギリで溜め込んでいた涙の箍を決壊させた。ぼろぼろとみっともないくらいに涙を流す弟の金髪を、プロイセンは何度も何度も撫でた。
本来ならば生真面目に撫で付けられているはずの前髪が、ぱらぱらと幾房か降りてきていた。その額に、またキスをする。
「なあヴェスト。……ヴェスト、見ろよ。俺の足が汚れてる。どうしてだと思う?」
「俺、が……」
「そう、おまえだな。おまえがどうした?」
「俺が汚し、た……」
愛しげな溜息をついて、プロイセンはドイツを呼ぶ。何かが決壊して涙を流していた目がプロイセンを見上げ、助けを求めるように潤んだ。けれどプロイセンはそれを無視する。
乱れた髪に手のひらを触れさせ、身を屈ませてまるで子供に言い聞かせるようにドイツに目線を合わせた。
「そう、おまえが汚したんだ。俺に叩かれて踏まれただけで気持ちよくなってイッちまうような、はしたないおまえが俺の足を汚した。なあ、おまえが汚したんだから、おまえがきれいにしろ。……口、開けて。そう、いい子だ。その口で、舌で、ちゃんときれいにできるな?」
噛んで含めるような、噛み砕いた物言い。昔の、ずっとずっと昔の、まだドイツが幼く、プロイセンを兄として純粋に慕っていたあの頃のような口調で諭すように囁いてやる。
ドイツは、ひくひくと震えながらそんなプロイセンに何を見たのか、ぼんやりと濁った目でプロイセンの赤紫色の瞳を見つめていた。
もう一度。できるだろ、と囁いてやると、ドイツは無言で何度も頷いた。
ほとんど床に這い蹲るようにして、ドイツは身を屈ませる。ドイツはその大きな体を丸めて、跪く。プロイセンが足を組んでいるために浮いたほう、先程ドイツが汚してしまった右足におずおずと唇を近づけた。ふるえる熱い息を吐きながら、そっと舌を差し出した。
肉色の舌先が、プロイセンの白い肌を醜く汚す白い己の体液に触れた。自分より体の大きな弟が床に這うようにして自分に傅き、己の精液を口にする。そんな倒錯的な空間に、めまいがした。
ぺろぺろと、唾液の絡んだ舌が何度もプロイセンの肌を往復して精液を舐め取る。眉間に皺を寄せ、屈辱に耐える表情が次第に緩んでいく。
初めは汚れた部分、汚れそのものだけに触れていた舌が、徐々に唾液を絡ませる場所を増やしていく。足の指の付け根から足の甲にかけてにしか精液は付着していないにも関わらず、ドイツはプロイセンの足の親指を口に含んだ。
ねっとりと指に唾液を絡め、すすり上げた。指と指の間にも舌を差し込み、ちろちろと愛撫する。くすぐったいような感覚に、プロイセンは口元が緩むのを感じた。
慈しむように両手でプロイセンの足を包むように触れ、足の裏側も舐め上げた。先程までブーツを履いていたために蒸れたにおいのするであろう足を、愛しげに丹念に舐めていった。
足の甲に、べろりと舌全体を這わせる。そのままそれを何度か繰り返し、今度は足首から踝にかけてを丁寧に舌でふき取った。慈しむようなその行動は、プロイセンの嗜虐心を刺激するには十分すぎる光景だった。
「っはは、可愛いな、まるで犬だ。愛しいヴェスト。……浅ましいな、また勃ってるぜ、この変態」
ドイツの顎につま先を引っ掛けて、器用に上を向かせる。
「この口は、何をくわえても感じちまうのか?」
屈んで至近距離まで顔を近づける。ドイツの目が何かを期待するように閉じられたが、プロイセンはその期待には応えずにドイツの唇を親指でこじ開けた。従順に開く口の中に親指だけを突っ込み、舌を親指で押さえながら残りの四本の指は顎の下に添えた。
下顎全体を掴むようにしながら、親指の腹でドイツの舌を撫で回す。舌の表面を塗りこむように撫で、下前歯の裏側を爪の先で突付いた。歯茎を爪でなぞり、奥歯の裏側をもゆっくり撫でた。上を向かせたドイツはプロイセンによって口をこじ開けられたまま、それによって飲み込むことは出来なくなった唾液がとろとろとプロイセンの手首を伝って流れていった。
口の中、という無防備な体内を好き勝手に蹂躙される感覚と、妙な息苦しさにドイツの息が上がる。
「ぐ、ゥ……はふ、ふ、ァっ」
「あーハイハイ、大好きなお兄ちゃんに口ん中ぐちゃぐちゃにされて気持ちイイのは分かったって。もうそんなにして……ほんっと、おまえが愛しくてたまらないよ、ヴェスト」
ちらりと視線をドイツの足の間に向けて、口の片側だけを釣り上げる嫌な笑い方に歪めた。ひく、と屹立したそれが震えた。
ドイツの唾液にまみれた指をずるりと口内から抜き、プロイセンは己の親指を舐める。先程までドイツを犯していた指。それを見ていたドイツは、まるで自分の口内を舐められたような錯覚に陥って背筋にぞくりと何かが走ったような気がした。
指は抜かれ、口を閉じることが出来るようになったにも関わらず、ドイツは口の端から涎を垂らしたままそれを拭おうともしない。薄く半開きになった口が、物足りなそうに震えていた。
プロイセンは、つい溢れそうになる高笑いを喉の奥で噛み殺し、くつくつと妙な音で笑いながらその口に触れた。
「なァんだよ。もっとしてほしいのか? 口ん中、俺の指でぐちゃぐちゃに犯して、顎が外れるくらい突っ込んで欲しいって顔に書いてあるぜ」
「ちが……う、ちがう、俺は……」
「違わねえよ。本当に違うんだったら、コレはどう説明する気だ? さっきイッたばっかのくせに、どろどろじゃねえか。ちょっと触っただけでイくんじゃねえの? ほら、触ってやろうか。おまえの大好きな俺の手で、めちゃくちゃに擦って欲しいだろ?」
ぐっと真一文字に唇を引き結ぶドイツに、プロイセンは焦れながらも出来るだけゆったりと微笑む。強情なやつ、とどこか嬉しそうに。
「俺のヴェスト。素直じゃねえこの舌、引っこ抜いてやろうか」
再びドイツの口の中に、プロイセンの指が入り込む。今度は親指にプラスして、人差し指が捻じ込まれた。
肉の色をしたドイツの舌を、プロイセンの親指と人差し指がぬめるそれに苦労しながらもきつく掴む。ぎりぎりと締め付けるように二本の指で捕らえ、僅かに力を込めて引っ張った。
「ぐっ……ん、んぶ、ゥっ、う゛っ」
きりきりと引っ張ると、流石にドイツの目が怯えたように見開かれる。舌を引っ張られただけでこんなにも無様な表情を見せる弟が、プロイセンは愛しくてたまらなかった。
不意に舌を掴んでいた二本の指を開いて解放し、プロイセンはにやりと酷薄な笑みを浮かべる。
今度は人差し指だけを、散々蹂躙した弟の口に突っ込んだ。けれど今回は、先程よりも深く深く。
「は、っぐ、ぅッ……ん、んぶ、ん、んん゛ーッ!」
「はははははは! 苦しいか、ヴェスト。可愛い、可愛い可愛い俺のヴェスト。俺だけの愛しいヴェスト」
執着と、狂気すら滲むプロイセンの声音は、ドイツの恐怖を増長させる。喉を突き破らんばかりに指をぐいぐいと捻じ込み、舌の付け根を強く押さえつけるようにして更に深くを指で抉った。
プロイセンの長い指が届く限界まで、喉の奥に押し込まれたとき。濁点にまみれた、咆哮のような悲鳴がドイツから上がった。びくんっ、と大きく体を震わせ、肩を痙攣させて大きく咳き込む。
「ッ、ア゛ぁぁっ、がはっ、は、あ゛ーッ、あ、う゛ぇ……っ!」
びちゃ、びちゃびちゃ。汚らしい水音を立てながら、数回にわたってドイツは床に己の胃の内容物を吐き出した。鼻をつく酸性の臭い。その異臭の中、プロイセンは酷く満足そうに唇を歪めていた。笑顔、といってしまうには、あまりにも濁った表情だった。
黄色みがかった液体の溜まりには、かろうじて固形を保っているものもある。昼に食べたヴルストだろうか、なんてドイツの頭の芯の冷静な部分が余計なことを考えていた。
ドイツは背中を痙攣させながら荒い息を零す。何度か苦しげにえづいていたので、また嘔吐するのだろうかと見守っていたプロイセンの予想に反して、ドイツはひゅうひゅうという頼りない吐息以外は吐き出さなかった。もう吐くものもないのだろう。
生理的なものと、そうでないものが混じった涙をぼろぼろと流しながら、ドイツは未だげほげほと咽ている。四つん這いになって、頭を垂れていた。
プロイセンは先程ドイツに舐めさせた己の足を少し高く上げ、床に這う弟の頭を上から押しつけるようにして踏んだ。吐いたばかりの生温かい己の吐瀉物に、ドイツの顔面を突っ込ませる。びちゃり、と醜い音。弟の右頬が汚れた。
「っは、……あはは、ははははは! ヴェスト、俺のヴェスト! 醜くて浅ましくて汚らわしいヴェスト。おまえのその顔、最っ高だ。可愛いよ、愛しくてたまらない!」
腰を折って、床に膝だけでなく顔さえもついたドイツにとびっきりの愛を叫ぶ。プロイセンはドイツの乱れた金の前髪を乱暴に鷲掴みにすると、そのまま力任せに引き上げて上を向かせた。右頬はやはり異臭で汚れている。
先程まで、プロイセンの性器や足や指、自分自身の精液を舐めていた、そして今は己の吐瀉物にまみれた胃酸臭い口に深い口付けを落とした。弟の喉を焼いた酸に、脳がとろけそうになった。
口内をきれいに舐め取り、唇を離して今度はドイツの頬についた汚れをもプロイセンの舌で清めていく。嗅覚と味覚をマイナス方面に刺激するそれに、今度はプロイセンが嘔吐しそうになりながら耐えてすべてを飲み込んだ。ドイツは、半ば恍惚とそんな兄の姿を見つめていた。
「愛してる。醜くて可愛い俺のヴェスト。おまえのことを、世界のすべてよりも愛してるぜ」
「俺も……おまえを、愛している」
そっと唇同士を触れさせて、深いキスを交わす。
このまま二人の境界線などとけてしまえばいいと、叶わぬ願いを抱いた。
「ハっ、あ、あっ……んっ、ん゛ー、っ!」
異臭と熱い吐息の立ち込める部屋の中、ようやく床からベッドに上がるよう言われたドイツは大人しくその言葉に従った。
プロイセンはドイツをベッドの上でうつ伏せに這わせ、後ろからその広い背中に歯を立てる。部屋を満たす異臭に、人工的な甘いにおいがプラスされた。無粋で悪趣味な色をしたローションを、本来必要な分以上にどろどろとドイツに垂らした。
左手の人差し指と中指が、プロイセンを受け入れるための場所を丹念にほぐしていく。指だけの圧迫感に、ドイツは額をシーツにこすりつけて耐えた。
「ヴェスト、口ん中だけじゃなくてケツも柔らかいんだな」
はは、とバカにするように笑いながら、プロイセンの右手のひらが臀部を打つ。ぱしん、と軽い音に、ドイツは息をつめた。
二本の指がそこを拡げるようにそれぞれ反対方向に動く。そこに、プロイセンの指をもう一本埋め込んだ。
「ぁぐ、あ、あ……っ、ん」
「っはは、かーわいい……」
何度も指を行き来させ、ふちの浅い部分をぐちぐちと擦るとドイツの指先がシーツを引っかいた。指が、白くしなる。
「ん、はぁ…ァ、……っ、もう、」
「んー? 『もう』、なんだよ」
「……はやく、いれてくれ」
プロイセンの意地の悪い問いに、ドイツは頭を下げて額をシーツに埋めるようにしながら消え入りそうな声でそう言った。
「は、あ、あ゛ァッ! う、っふ……は、ふ…っん、ん」
「アぁ、は、はぁ……ヴェスト、っ」
うつ伏せのドイツを捻じ伏せるようにして、解した場所を熱いもので犯す。すべて埋め込んでもしばらく動かず、どくどくと脈打つ内部を味わった。じわじわと腰に感じる甘さに恍惚とした。
不意に腰を引き、小刻みに揺さぶる。
「ぁふ、あ、は、はっ、んっ……ん゛ぅ、うーっ」
たわんだシーツを噛み、何かを必死に堪える。そんなドイツの様子があまり面白くなくて、プロイセンはドイツの腰を掴んだ左手を離して振り上げた。
力を込めて振り下ろせば、乾いた破裂音が部屋の空気を震わせる。細く引き攣った悲鳴が上がった。プロイセンの手が叩いた尻が、僅かに赤くなっていた。
「ヒッ、ぁ……? な、何を、っが!」
がくがくと揺さぶりながら、何度も何度も平手で打つ。手のひらが痺れるほどに叩き続けると、ドイツの悲鳴が痛みを訴えるものから嬌声に変わっていった。
「っふ、う゛ーっ……あ、あぐ、ッ、痛い……い、いたっ、ァん! ひィ、っ、あ、あ、あ゛ァ」
「痛い、だけか?」
甘さの滲む声を揶揄して笑ってやると、そのとき初めてそのことに気付いたドイツは、絶望したように息を飲んだ。
うそつき、と低く囁きながら、プロイセンは腹をドイツの背中にぴったりとくっつけてがくがくと揺さぶった。そうしながらも左手はやはりきつくドイツの尻を叩いていた。
硬い背中。広く逞しい背中は、昔からは考えられないほどに成長した。
小さかった手のひらはプロイセンよりも大きくなり、短かった足は太く長く伸びた。それでも。
「あっ、あ、ああ、……っん、あ、ぅん、ん、あァ!」
上ずって高くなった声で、泣きそうになりながら――もしかしたら、もう泣いているのかもしれない――プロイセンに縋る声が愛しい。泣くときに手のひらをぎゅっとかたく握り締めるのも、昔から変わらないドイツの癖だ。
シーツを握り締めた拳に、右手を重ねる。
「なあ……気持ちいいか?」
「あ……っん、あ、わ、わからな……っ、ひァ、あっ」
「わかんねえの? ここ、ぐちゃぐちゃにされて……こんなになってんのに?」
ぐっ、と腰を押しつけ、体の中をきつく抉った。前立腺をぐりぐりと押してやると、ドイツは声も出ないほどに感じ入り、息を詰まらせた。
白い喉を仰け反らせて乱れた髪をぱさぱさと左右に振る。短い金髪がシーツに擦り付けられる姿を、プロイセンは後ろから満足そうに見つめていた。ドイツを叩いていた左手を前に回して触れると、それはびくびくと脈打って今にも達してしまいそうだった。
「あ、なに、……もうイきそ?」
「……っ、ん…す、すまない……俺、っ、あ、う゛んっ!」
とろけたものを性急に擦り上げる。喉の奥で押しつぶした悲鳴を飲み込もうと口を閉じたドイツの内部を、腰を使って抉った。
唐突に手を離し、先程まで叩いていた箇所をもう一度大きく引っ叩く。そのまま左手はドイツの腰を掴み、右手は相変わらずドイツの右手と重ね合わせたまま激しく腰を打ちつけた。肉のぶつかる生々しい音がする。
「は、あ゛ッ、あ……どうして、っ、離す…っふあ゛ァ! あ、ああ、イッ、あ」
「もう後ろだけでイけるんじゃねえの。ほら、おまえの好きなトコたくさんしてやるから……イッちまえよ」
体内で一番感じる箇所を先端が引っかくように刺激した。左手で太い腰のラインをなぞって胸元までさすり上げ、今まで触っていなかったくせにかたく尖っている乳首にも刺激を与えた。筋肉のたくさんついた厚い胸板を鷲掴みにし、短い爪を立て、つまみ、きつく押しつぶす。
同時に、肩に強く歯を立てた。甘噛みなんて優しいものではない。皮膚を破り、歯が肉に潜り込んで細い血管を引き千切るほどに強く。強く。
「ひい゛ッ……! あ゛ァ、あ、あひ……っこ、こわ、いや、怖い…痛っ、あ、あ゛ッ!」
「ん、んっ……は、ァ、怖くねえ、よ。ヴェスト、ほら、怖くないだろ。感じて、そう、息つめるな。……ああ、いい子だ。そう、気持ちいいだろ? いい子だ、ヴェスト。可愛いヴェスト。あ、あッ、……俺もイきそう、だから。なあ、イけよ。大丈夫、怖くないから、気持ちよくなっちまえって」
酸のきつい臭いと、人工的な甘い香りに、互いの汗。それから、つんとした性の臭いが交じり合ったにおいに、もう全てが麻痺していた。
ぐずぐずにとろけた内部を擦り、噛み付いて血の流れる肩にたくさんキスをする。血をすすり、飲み込んでまた肩に口付けた。
「っふ、ア、っん、ヴェスト、イけそうか?」
「あ、あ……あ、っんあ、あ、わから、な…ァんっ、いく、もう、いきたい……ひあ゛、あ、あふ、あ゛ああっ!」
「……っく、あァッ!」
まぶたの裏に真っ白い火花が弾けて、ドイツはとうとうプロイセンに触れてもらえなかったところから白い体液を迸らせた。びくびくと痙攣するドイツにきつくしめつけられて、プロイセンも少し送れて達した。深く深くに押し込む。一番深いところまで汚したいという支配欲の表れのように。
ベッドにくたりと沈む大きな体を愛しげに抱きしめ、プロイセンは何度も頬にキスをする。
経験したことのなかったであろう強い愉悦にさらわれて、ひくひくと震えながらまぶたを閉じて気を失っている弟へ愛を囁いた。
「愛してるよ。世界でいちばん愛してる。俺の可愛いヴェスト」
狂気にも似た感情がこの奇妙な空間に満ちて、愛と呼ぶべき心を形成していた。
未だ、朝は来ない。
end.
+++
ドイツがドMですみません。
ちょっとマニアックな感じのものが書きたかったんです。好き勝手やっちまいました。
でもそのことに関しては反省も後悔もしていません。テヘッ。
少しはエロくなったでしょうか。