バニラのわがまま



 目の前に山積みになった書類に、僅かながら殺意を覚える。それは連日の睡眠不足や、現在手をつけているものを片付けてもまだまだ仕事が山積している事実などに対する八つ当たり以外の何物でもないのだが、それでもドイツは頭が痛くなるほどに積まれた机上の書類たちに苛立ちを覚えた。
 がりがり。ペンが紙を引っ掻く音が耳障りだ。その音を生産しているのがまぎれもなく自分であることもまた、彼にとって苛立ちを助長するものでしかなかった。
 ふう、と重い溜息をついて目頭を指で押さえたところで、不意に扉を数回ノックする音がする。ドイツが顔を上げて返事をするのを待たずに、扉は開かれた。こんなことをするのは一人しかいない。そもそも、今この家の中には自分とあの人しかいないのだから。
「ヴェスト、やってんなあ」
 扉を開けて、兄が部屋に入ってきた。ふわふわと、いい香りがする。甘いにおいに首をかしげると、プロイセンはにかっと笑い、机の上に乗り上げてドイツとの距離を詰め、その額にキスを落とした。突然降ってきたキスに対応しきれずドイツは慌てて身を引くが、瞬時に赤く染まった頬や耳は隠しきれなかった。楽しそうに笑う兄が恨めしい。
 仕返しに、と兄の胸倉を掴んで引きよせ、乱暴にその唇にかみつくと、兄は驚いたように目を見開き、そして楽しそうににんまりと笑ってドイツの口腔を貪り始めた。思わずひっこめてしまった舌を絡め取られ、ぬるりと唾液を絡められる。ドイツはそのままぼやける頭を兄に託してしまいたいという欲求に必死で抗い、わずかに震える手のひらでプロイセンの胸元を押して
顔をそむけた。
「ぁんだよ、おまえからしてきたくせに」
「う、うるさい! それより兄さん、どうしたんだ」
 甘いにおいがする。と、行儀悪く机の上に乗り上げる兄を見上げると、プロイセンはそうだそうだと思い出したように机の上から飛び降りた。
「ホットケーキ焼いたんだよ。おまえも食うだろ?」
「ああ……そうだな、この仕事を片付けたら頂こう」
「ばか。焼き立てを食わせたいっていうお兄様の気遣いが分かんねえのかよ」
 不機嫌な表情を作り、プロイセンは腰に手を当てて弟を睨んだ。元々あまり目つきがいいわけでもない兄に睨まれ、ドイツはぐっと言葉に詰まった。彼は別段悪いことをしたわけでもないのに、叱られている子供のように眉を下げると、兄はにかっと笑ってドアの方へ一歩踏み出した。
「ヴェスト。すぐ来いよ」
「え、あ、ああ……」
「うっし、いい子だ!」
 結局は兄の言葉に逆らえない、とドイツは小さく笑った。
 それに、こうして多少強引にでも仕事を取り上げて休憩をとらせなければ、ドイツはいつまでも眉間に皺を寄せたまま机に向かい続けていただろう。本人もそれが分かっているから、無理矢理にでも休息を押し付けてきてくれる兄には感謝をしていた。
 甘く溜息をついて、ドイツは根が生えそうなほど座り続けていた椅子からようやく腰を上げた。

 キッチンを覗き込むと、皿にホットケーキを乗せている兄の姿があった。手伝おうか、と声をかけると、兄は軽い動作でフライパンをコンロに戻す。
「いーっていーって。おまえはソファーで待機してろ」
「片付けくらいは……」
「ヴェスト、お兄様の命令には絶対服従! 返事は?」
「……Ja」
 よし、行け! と笑って指示を与えてくる兄に、ドイツも冗談めかして軽い敬礼を送ってキッチンを後にした。本来ならダイニングのテーブルに腰掛けるところだが、あの人はソファーが好きだから、ふかふかのソファーに座ってホットケーキを食べたいのだろうか。そんなことを考えながら、プロイセンの命令通りソファーに座って待機する。プロイセンはまだキッチンから戻って来ず、ドイツは手持ち無沙汰にクッションを手繰り寄せた。
 先日、天日干しをしたばかりのクッションはふわふわとしており、ドイツはそれまで溜め込んでいた疲労が一気に流れ出るのを感じた。ぼふ、とクッションに顔をうずめると、意識せず深い深い溜息がこぼれる。先程の甘い溜息とは違う、疲労と憂鬱を含んだ重たい溜息だった。
「ヴェースト、お待ちかねのお兄様が……っておい、何だよ、どうした?」
「ん、ぁ……いや、べつに」
「……どーせ疲れてんだろ。兄さんはなんでも知ってるんだぜ」
 ホットケーキを乗せた皿を片手にリビングにやってきたプロイセンは、クッションを抱きしめて今にもソファーの上に崩れ落ちそうになっている弟の傍に立ち、その金髪を見下ろした。
 空いた片手で、固めた髪を撫でるようにぽんぽんと軽く叩いてやり、顔を上げさせる。
「ちょっと寝るか? 今ベッド用意して……」
「いや、眠いわけではないんだ。それより、ホットケーキが冷めてしまう」
 寝室の方へ向かおうとするプロイセンのシャツの裾を掴んで引き止め、ぐっと自分の方へ引っ張る。おっと、とバランスを取りながら、プロイセンは意図せずドイツの膝の上に座り込むような体勢になってしまった。
 にんまりと笑い、ドイツの膝の上で器用にバランスを取ったまま向きを変えて、ドイツの膝の上に乗って向かい合うような体勢をとる。至近距離に兄の顔が近付き、ドイツは思わず顎を引いた。
 きれいなまつげに縁取られた、赤みの強いむらさきの瞳。つり上がった目はお世辞にも柔らかい印象とは言えないが、とても美しかった。薄い唇が、ドイツに触れるか触れないかのギリギリの位置まで近づけられた。
「、ッ!」
「ほらヴェスト、口あけろ」
 吐息をたっぷり含んだ声。促すように指で唇をくすぐられ、ドイツは耳まで熱くなるのを感じながらぎゅっと目を閉じ、おずおずと唇を開いた。途端に口の中に入り込んでくるバニラの香り。バニラエッセンスを溶かし込んだ生地と、どうやらホットケーキの上にもバニラアイスが乗っているようだった。温かいホットケーキと冷たいバニラアイスが絡み合い、心地良い甘さを作っていた。
「ん、……んっ」
「美味いだろ?」
「ああ。だが気に入っていたメイプルシロップはどうしたんだ?」
「……切れた」
 拗ねたように唇を尖らせる兄の、なんと可愛らしいことか。ドイツはくすりと笑って、両手をプロイセンの腰に回し、もう一口、とねだった。兄は嬉しそうにへにゃりと笑ってフォークでホットケーキを小さく切り分け、またドイツの口元に運ぶ。
 口内に迎え入れたホットケーキはふわふわと甘く、溶けたバニラアイスをたっぷりと吸っていた。
 昔から変わらない味。ドイツが幼いころ、プロイセンはそれこそ毎日目が回るほど忙しかった。戦場を駆け、国外との交渉を持ち、事務仕事をこなして、また戦場へ出る。傷だらけで帰ってきては死んだように眠ってしまう兄に、何度肝を冷やされたか。
 けれど、その息つく暇もないような忙しない日常の中で、プロイセンは時折仕事をする手を休めて厨房に立っていた。一種の息抜きだったのだろうか。今となっては兄は答えてくれないが、ドイツが幼いころ口にしていたものの中で、どんな職人が作ったものよりも兄の作ったクーヘンが一番おいしかったと記憶している。
 その記憶にたがわぬ、変わらない味。甘すぎるものがあまり得意ではないドイツの舌に、これほどまでに心地良く落ちる甘さを、兄の作るもの以外にドイツは知らない。おそらく、ずっと昔から馴染んできた味だから。ドイツの味覚の根底を作り上げたこの味が、愛しくて仕方がないのだろう。
 プロイセンの作るものがこんなにも美味であることなど、自分以外に知る者はほとんどいない。それがどこか優越感を生んで、ドイツは口元をほころばせた。
「な、美味いだろ?」
 笑みを浮かべたドイツを見て、兄は満足げに笑っていた。
 昔から変わらないのは、作るお菓子の味だけではない。この笑みも、昔からずっと変わっていないと、ドイツは思った。冷淡な目、酷薄に笑う兄を、何度か見たことがある。怒りに己を失いかけた姿も目にした。けれど、弟を慈しみ愛するときの笑い方は、何百年経っても色褪せることはなく、そこにあり続ける。
 また、こうして多少強引な手段をもって、自分を気遣って休息を取らせようとする、ある種不器用な愛情表現の仕方も変わらないと、ドイツは思った。
「……ありがとう、兄さん」
 小さく呟くように感謝を述べると、プロイセンは一瞬きょとんと目を丸くし、くしゃりと笑った。


「ん、ッ……んぅー…」
「こ……こら、ヴェストぉ……っ!」
 ホットケーキをたいらげたドイツを満足げに見下ろし、膝の上からどこうとしたプロイセンを引きとめたのはドイツだった。片手を兄の腰に回し、もう片方の手で溶けたバニラアイスが僅かに残るのみとなった皿を兄から取り上げて、近くのローテーブルに置いた。
 身をよじって逃げようとするプロイセンと強引に距離を縮め、唇に噛みつくようにキスをした。唇を甘く噛み、唾液を塗り込むようにして何度も舐めてはまた貪る。腰を押さえている手とは反対の手を兄の後頭部に添え、やわらかな髪を梳くように撫でながらキスを繰り返した。
「にいさん……っ、んぅ、兄さん……」
「ヴェスト、だめ、ダメだって。可愛いヴェスト、いい子だからやめなさい」
 プロイセンはドイツの肩と額に手を置き、腕に力を込めて弟を引き剥がそうとしたが、ドイツは駄々をこねるように首を振り、ぎゅうぎゅうと兄を抱きしめてその胸元に額をすり寄せた。珍しく素直に甘えた仕草をする弟を冷たく突き放せるほど、プロイセンはできた兄ではないことを、ドイツは知っていた。
「こーら、ヴェストぉー……」
 困ったような声が頭上から落ちてくる。きっと眉を下げ、駄々をこねる弟をどうするか迷っているのだろう。細くて美しくて、でも傷だらけの手がぽんぽんとドイツの金髪を軽く叩くようにして撫でた。離れろ、という穏やかな意思表示なのだろう。けれど弟は無言のまま兄に抱きつく力を強め、離れようとはしなかった。
「……仕方ねえなあ」
 呟きとともに降ってきた溜息は、とても甘いものだった。
「にいさん……」
「ほら顔上げろ。キスしてやるから」
「ん……」
 おずおずと顔を上げると、歯を見せて笑う可愛らしい兄がいた。兄の言葉に期待して、僅かに顎を突き出して唇を兄に差し出すと、プロイセンはその素直すぎる行動に少し笑っていた。急かすように服を引っ張ると、はいはい、と子供にするような声でなだめられてしまった。
 それに文句を言おうにも、言葉を紡ぐための器官は兄の薄くてかさついた唇に塞がれていた。また、その瞬間ドイツにとって今プロイセンと、大好きな兄とキスをしているという事実以外どうでもよくなってしまったために、兄に対する文句は永久に葬られることとなった。
 プロイセンが差しだしてくる舌に自らの舌を擦り合わせ、わざと音を立てて吸い上げる。兄の口内から吸い上げた唾液をためらうことなく嚥下し、もっと、と舌を伸ばしてプロイセンの上あごをざらりと舐めた。合わさった唇から、ん、という兄の小さな呻き声が直接流れてきて、ドイツの腰がぞくぞくと震えた。
「ぁ、んっ…んぅっ……」
 上ずった声がドイツからも漏れる。鼻にかかったような情けない音だったが、深く重ねた唇がその声ごと飲み込んでしまうようだった。
「はは……おまえのくち、甘いな。バニラの味がする」
 うまそう。冗談めいた口調で、けれどとろりと溶けた瞳で見つめられ、ドイツはただ覆いかぶさってくる唇を受け止めることしかできなかった。かぷかぷと甘く食むように貪り、口内を舌で掻きまわされる。
 ちゅぷ、くちゅ、と頭に水音が響いて、くらくらした。
 しばらくそうして互いの唇とやわらかな粘膜を味わっていたが、終わりはすぐにやってきてしまった。控え目に舌を歯で挟まれ、驚いて舌を引っ込めたところで兄の唇が離れていく。
「ん、……ぁ、はあ、もういいだろ。おしまい。な?」
「……嫌、だ」
 気付けば膝の上に乗せた兄に縋りつくような格好になっていた姿勢を戻し、ドイツは再び兄に口付けようと口をひらく。互いの唾液に濡れたプロイセンの淫靡な唇に噛みつこうとしたところで、彼の手がドイツの額を押さえた。
 美しい、けれど小さな傷や大きな傷にまみれた手が、手のひらが、指が、ドイツを拒んだ。
「だぁめ」
「……なぜだ」
「おまえ好きにさせとくとヤろうとすんだもん。真っ昼間っから、しかもリビングでなんて俺は嫌だぜ。暗くなったらキスもそれ以上もいっぱいしような。だから今はもうおしまい。俺のヴェストはいい子だから分かるだろ?」
 整髪料でごわつく髪を撫でながら、『兄』の顔で穏やかに微笑むのだから、兄はずるい。ドイツは勝手に熱くなっていく頬と耳を感じながら、それでも食い下がった。
「でも、兄さん……」
「何だよ、今日はやけにわがままだな。俺の可愛い弟は、俺様に甘やかされすぎて溶けちまったのか?」
「……すまない」
「謝れなんて言ってねえよ。わがままも可愛いから何の問題もねえぜ! ただな、ヴェスト……」
 一度言葉を途切れさせ、プロイセンはドイツの額や頬、鼻先にちゅ、と小さくキスを落とす。ドイツはその唇を追いかけて顔を向けるが、するりとかわされてしまった。
 苦笑するように顔の片側を器用に歪ませて、兄は笑う。
「これ、どーにかなんねえ?」
 プロイセンが、ぐっと腰を突き出して刺激してきたドイツの性器は、ゆるやかに反応を示してかたくなっていた。呆れたように苦笑され、ドイツはかっと顔が熱くなる。
「キスだけでこんなにすんなよ。ったく、やーらしい体になっちまって……」
「に、兄さんが……兄さんが、俺をこうしたんじゃないか……っ!」
 おれがいやらしいのは、あなたのせい。だから。
「だから、……にいさん」
 ――おねがい。
 懇願する声が震える。ドイツは顔を俯けたままプロイセンのシャツを握りしめ、く、と引っ張ってねだった。おねがい、にいさん。その外見にそぐわない、子供のわがままのような幼い言葉。
 プロイセンは困ったように眉を下げ、髪をがりがりと掻いて唸る。
「おまえさあ、いつからそんなにおねだりが上手くなったんだよ」
 呆れと、甘い戸惑いを含んだ声がドイツに降り注ぐ。顔を上げると、兄はへにゃりとした情けない顔で笑っており、その歪んだ唇がドイツの額に優しくおりてきた。
 ちゅ、と可愛らしい音を立てて口付けを落とされたそこを押さえながら兄さん、と呼ぶと、プロイセンは両手を肩の位置まで上げて首を振った。
「お兄様の負け。おまえかわいいんだもん、わがまま聞いてやるよ」
 ただし、ベッドじゃないと嫌だからな。早口にそう呟いて、プロイセンはずっと乗っていたドイツの膝の上から降りて、ドイツに手を差し伸べた。
「おいで、俺の可愛いヴェスト」
 その手を取ったドイツの口元は歓喜に震え、瞳は欲望を灯して揺らめいていた。


 暗い部屋。まだ太陽が高い位置にいる時間だと言うのに、この部屋はとても暗い。遮光性の高いカーテンをきっちりと閉め切って、ベッドの傍にある棚の上に乗ったスタンドだけが光源としての役割を果たしていた。ここだけが、まるで世界から切り離された夜のようだった。
 体格のいい男性二人を乗せたベッドのスプリングがゆっくりと軋む。優しく倒されたドイツは、その上から覆いかぶさってくる兄に手を伸ばして無言のままキスを求めた。プロイセンはそれを察し、腰を屈めて弟の求めるままにキスを与える。触れるだけで一度離れ、再び触れてまた離れてを繰り返す。もどかしいキス。今すぐ乱暴に貪ってしまいたい衝動を必死で抑えていた。おそらく、ふたりとも。
 ん、ん、と甘えるような音でキスをねだり、与えられる口付けと愛情に酔う。
「んっ……くち、開けろ」
 言われるがまま、プロイセンの唾液に濡れた唇を開くと、ぬめる舌が差しこまれた。あまり体温の高くない兄らしく、舌もややぬるく、自分だけが火照っているような錯覚に陥った。ゆるやかに拒む兄に強引にねだってベッドにもつれこんでしまったのだから、もしかしたら兄は呆れているのかもしれない。言うことを聞かない、わるいこだと思っているのかもしれない。
「ん゛ぅっ……っふ、ぅ」
 苦しそうに眉をひそめたドイツを気遣ってか、プロイセンは一度舌を抜いて唇を離した。しかしドイツは無意識のうちにそれを追いかけるように舌を伸ばしてしまい、すぐに恥ずかしそうに視線を逸らせた。
「……ごめ、んなさい」
「何謝ってんだ?」
 今まで必死に兄に吸い付いていた唇を噤み、おずおずとプロイセンの首に腕をまわしてドイツはその額を兄の胸に押し付けた。
「兄さんの言うこときかなくて、……ごめんなさい」
 できるだけ兄の顔を見ないようにしながら、ドイツは躊躇いながらごめんなさいと呟く。子供が大人に謝るように、その口調はどこか幼かった。大きな体、逞しい二の腕、低い声。それなのに、叱られた子供みたいに呟くから、プロイセンはその唇が震えて甘く笑みの形を作るのを抑えられなかった。
 顎に指を添えられ、俯いた顔をやわらかく強制的に上げさせられる。ドイツは揺れるあおい目でプロイセンを見上げると、彼が泣きだす直前のようなおかしな笑顔を作っていることに気付いた。にいさん。呼ぶと、プロイセンはへにゃりと可愛らしい(少なくともドイツにはそう見える)顔で笑顔を作った。
「あーもう、……おまえ、かーわいいなあ……」
 しみじみとそう呟かれ、ドイツは首をかしげることしかできなかった。
「ほんっと、俺のこと好きだよなあ」
「す、……すき、だ」
「キスだけでこんなにしちまうくらい?」
 く、と膝頭でゆるやかにもたげる性器を刺激され、ドイツは肩をすくめて目を細める。
「すき……兄さんが好きだから、キスだけで……こ、こんなに……っ」
「ん、すっげえやらしい。へんたい」
「ぁう……」
 蔑まれたと、落胆されたと感じて、ドイツはあおい目を潤ませ、ずきずきと胸が痛んでまた強引に俯いてしまった。それを見たプロイセンは少し困ったように息を吐き出す。甘い困惑の溜息が、ドイツの唇に触れた。
「怒ってるわけじゃねえよ。可愛いヴェスト。俺のことが好きで好きでしょうがない、ばかな子。俺なんかを好きになって、こんな、屈強で美しい体を好き勝手にいじられることが気持ちいいって教え込まれちまった、かわいそうな子。……ごめんな、放してやれねえんだ。おまえが好きだから、大好きで、どうしようもなく愛しいから、俺の傍から絶対に解放してやれない。……ごめんな」
 額、鼻の頭、頬、唇。次々と懺悔のようなキスを降らして、プロイセンは笑う。笑う。ただ、笑う。
 ドイツは苦しげに眉根を寄せる兄の首に腕を回し、ぐっと引き寄せて唇に噛みついた。柔らかく歯を唇に押し当て、舌を口の中に侵入させる。戸惑うようにプロイセンが舌を引こうとするのを拒むように、更に腕に力を込めた。
「んぅ……」
「っ……ヴェスト、ぉ……」
「兄さんは、ばかだ。俺があなたを……好き、だから。だから俺があなたを放してやれないんだ。兄さん、俺だけの兄さん。あなたが好きで好きで、どうしようもない。……こんな浅ましい俺を、愛してくれるだろうか」
 縋るような声だった。ドイツは泣きそうになっている自分の顔を見せないように、引き寄せた兄の体に自分の胸を押し付けた。プロイセンはしばらく口をつぐんでいたが、やがて抱き寄せられた体をぴったりとドイツに密着させ、とくとくと打つ鼓動を聞きながらドイツの頭を撫でた。拗ねてしまった子供をあやすような撫で方だった。
「うん、……うん、愛してるよヴェスト。一番だ。いちばん好きだよ。世界よりもおまえが大切だ……」
 歌うように囁いて、プロイセンはドイツの額にまたキスをする。飽きずに何度も繰り返されるキスは、誓いの言葉のようだった。
 キスをしながら頬を撫でられ、ドイツは必死に兄に縋りついて唇をねだった。舌を絡めて吸い付き、吐き出される吐息すら逃すまいと貪り、息苦しさに喘ぎながらそれでも兄の背をかき抱いてキスをする。
「さわって、兄さん……触ってくれ」
 ようやく舌が離れ、ドイツはべとべとに濡れた唇で兄をねだる。至近距離にある兄に舌を伸ばし、同じく唾液で濡れた口元を舐めた。プロイセンの下唇を食みながら、ドイツは手をプロイセンのシャツのすそに忍ばせた。シャツの中に入れた手で、あまり体温の高くないプロイセンの脇腹をそろそろと撫で上げると、その手のひらに兄がひくりと反応したことが伝わる。
「ん、くすぐってえよ」
「……ふ、にいさん、可愛いな」
「あっ、おまえなあ、俺様は可愛いじゃなくてかっこいいだろ」
 そうむきになって、プロイセンはドイツの首筋に噛みついた。色の薄い髪がドイツの頬をくすぐり、彼は目を閉じる。ひやりとした体温が覆いかぶさっているのを感じて、ドイツは兄を抱きしめた。低い体温。何をしても混じり合えないこの体。それらがもどかしくて、同時にどうしようもなく愛しくて、ただ抱きしめた。
 プロイセンは刹那目を瞠ったが、すぐにやわらかく弧を描いて弟の耳元に唇を寄せる。
「可愛いヴェスト。抱きしめてくれんの嬉しいけどよ、これじゃできねえぞ? ほら緩めて、服も脱がせらんねえし……っはは、こら背中はくすぐってえんだって」
 忍ばせた手のひらと指先で、ドイツはプロイセンの背中を撫でる。なめらかな肌には数えきれないほどの傷があり、そのくぼみに指を這わせては指先が熱くなるのを感じた。あつい。あたたかい。いとしい。
 シャツをめくりあげ、背骨の窪みを伝って肩甲骨の辺りまで指が伸びる。くすぐったさに鼻を鳴らす兄をうっとりと見上げながら、ドイツは兄のボトムを脱がしにかかった。片手は背中を撫で、片手でベルトのバックルをいじるが、兄と体を密着させているために上手く外せない。それを見た兄が笑った気がして、ドイツは背に回していた手で爪を立てた。
「い、ッ……おまえなあ」
「脱いでくれ」
「なんだよ、脱がしてくんねえの?」
 プロイセンはにやりと意地の悪い笑みで囁く。ドイツが上手く出来なかったことを分かっていてそう言っているのだろう。ドイツはむっとした顔を見せ、兄の背中に回していた腕を解いてからぐっと上体を起こした。バランスを崩したプロイセンと体勢を入れ替え、ドイツがプロイセンを組み敷くような格好をとった。
「おー、新鮮。久しぶりにおまえが上になるか?」
「ん……いや、今は兄さんに抱かれたい」
 そっか、と頷くプロイセンのベルトに再び手をかけ、今度は難なくボトムを脱がせることに成功した。体を下げ、下着越しに性器を撫でると、プロイセンの体がひくりと震えたのが感じられた。
 人差指で布の上から輪郭をなぞり、唇を押し付けようとした。あ、と慌てたような声が頭上から降ってきて、ドイツは唇が下着に触れる数ミリ手前でストップして兄を見上げる。その表情は、どこか不満気だ。
「くわえるなよ」
「……なぜだ」
「俺、ちんこくわえた口とキスすんのやだから。手だけで、な?」
 たくさんキスがしたいんだよ、と甘く微笑まれ、ドイツはとろけてしまいそうなほどにうっとりと潤んだ目で頷いた。指の腹で下着の上からぐにぐにと性器を軽く押し、さすって、ゆっくりと下着をおろす。まだほとんど反応していない性器が露出したのを見ただけで、唾液が口の中を満たすのを感じた。
 あ、あ、と今にも達しそうなほど甘い声が無意識のうちにこぼれ、ドイツはそろそろと兄の性器を手のひらで包み込んだ。口をひらき、けれど舐めたりくわえたりしてはいけないと言われたことを思い出して、おずおずと舌を引っ込めた。
 飲み込んでも溢れそうになる唾液をどろりとプロイセンの性器の上にこぼし、それを潤滑剤の代わりにしてぐちぐちと手を上下させた。
「ん、ん……」
 徐々にかたさを増すそれにうっとりとした視線を送りながら、口から嬌声にも似た声が落ちそうになるのを必死でこらえた。
「ぁ……っ、あ、にいさん…きもちよく、なれそうか? にいさんのペニス、少しかたくなって……きた、ぁ…っ」
「ん、……うん、気持ちいいよヴェスト。っあ、息、かかって……っ、おまえ、興奮しすぎだっての……」
 更にべちゃりと唾液を落とし、段々と透明な体液が滲んできたそれをまた擦り上げる。背中を丸めてプロイセンの性器をしごくドイツの唇は、目の前の性器に今にもしゃぶりつきそうにぽっかりと開かれていた。
「……よだれ垂らしてんじゃねえよ、へんたい。俺のちんこ擦ってるだけでそんなに興奮すんなっての」
 呆れたような口調なのに、言葉全体にしみわたる愛情が、ドイツを更に恍惚とさせる。知らぬうちに口の端からこぼれていた唾液を親指で拭われ、ドイツは口元に押し当てられたプロイセンの指を追いかけてぱくりと口にくわえた。
「あ、っん……ぁう、う゛ぅ…んむ、っ……」
「こら……あほヴェスト、くち、はなせよ」
「ん゛ーっ」
 プロイセンの親指をくわえたまま駄々をこねるように首を振り、ぬめる舌を指に絡ませる。ちゅう、と吸い付いて、やんわりと歯を立てながら指の腹を舌で撫でてから、根元まで指をくわえ込んだ。
「指なんか舐めて楽しいか? 舐めるんなら、こっちの指にしろよ」
 半ば強引に指が引き抜かれ、ドイツは名残惜しげに舌を伸ばして兄の指を追った。その舌の上に、ざらりとした肌が乗る。かたくて、所々痛んだ皮膚がめくれている。かさかさに乾いた指先は荒れていたが、ドイツは乗せられたプロイセンの中指をねっとりと舐め上げた。はあはあと熱い息の漏れる口の中にうっとりと迎え入れ、たっぷりの唾液を絡ませて吸ってからまた唾液を塗り込む。
 兄の指の皮膚に波が打ち始めたところで、ドイツの口内の体温が移ってなまあたたかくなった指がそっと引き抜かれた。あう、と言葉を知らない子供のような声が落ち、プロイセンは少し笑った。ドイツの目はもうとろとろに溶けている。引き抜かれた指を追いかけるように舌を伸ばしながらはあはあともどかしそうな荒い吐息を繰り返していた。
「こっちおいで。もうちょっと上、そう、乗っかっていいから。……ん、息、詰めんなよ」
 促され、ドイツはプロイセンの体に覆いかぶさる。上体を少し起こしているプロイセンの上に乗り、腹と胸をぴったりとくっつけるようにして抱きついた。広げた脚の間に兄の手が移動し、ドイツの唾液で濡れた指がゆっくりと挿入される感覚にドイツは背中を引き攣らせた。
「あ、あ、……あ゛、ッ」
「痛いか?」
「……少し」
 眉を下げて素直に答えると、プロイセンはごめんな、と短く呟いて入れたときと同じくらいゆっくりと指を引き抜いた。排泄のような動きに、ぶるりと体が震える。
 プロイセンはベッドの横、スタンドの乗った棚の引き出しに手を伸ばし、手探りで半透明のボトルを持ち出した。キャップを開けて傾けると、粘性の強い液体が口からゆっくりと垂れてくる。それを手のひらに落とし、指に絡め、再び指を潜り込ませてきた。
「あ、ぅ……っ、うぐ、っんん……」
「まだ痛い?」
「い、たくない……痛くない、兄さん、平気だからもっと」
 おそらく、どくどくと今にも弾けそうなほどに脈打っている心臓の音は兄に届いているのだろう。皮膚二枚を隔てて二つの心臓が重なる。自分の心臓がうるさくて兄の心臓の音が聞こえないことが、ドイツには少し残念だった。
 ぐっと押し込まれる指の感触に押され、ドイツは腕をプロイセンの首に回して縋りつくように抱きしめた。体重のほとんどを兄に押し付けてしまっていることに焦って、ベッドについた膝に力を込めようとするものの中々上手くいかない。大柄な自分が、自分より細身の兄を押しつぶしてしまうことが申し訳なかった。
 もぞもぞと動いてなんとか体を浮かそうとするが、結局プロイセンの手が、ドイツの中を抉る指とは別の動きで腰を押さえ、強く抱きしめてしまう。
「兄さん、だめ、重いだろう?」
「そうだなー、このごつごつ筋肉め。重たくなりやがって」
「だ、だから、今どくから……」
「だぁめ。おまえさあ、どんだけ俺を貧弱だと思ってんの? 可愛い弟がひとり乗っかってるくらい、平気だって」
「……貧弱のくせに」
「んだとこら。おまえ、可愛いくせにそんな可愛くないこと言ってると……いじわる、するぞ」
 くすくす笑って、わざと兄を貶す言葉を選んだ。ドイツが少し気分よさそうにしているのを見てプロイセンも笑い、くすくすと同じ笑い方でドイツの耳をくすぐった。
 いじわる。その単語にひくりと肩を竦ませたドイツに、今度はプロイセンが気分を良くする番だったようで、兄は赤い目を細めて笑っていた。
「いじわる、されたい? こん中、ぐちゃぐちゃってして、おまえが泣いちゃうまでイかせてやんねえの。気持ちいいとこだけいっぱい擦って、やだやだって泣くまでいじめてやるぜ。そんないじわる、されたいか?」
 可愛らしい笑顔だった。赤い目も口元もゆるやかな弧を描き、プロイセンの手のひらがゆっくりとドイツの腰を撫でる。ぞくぞくと甘く痺れ、兄に触れている部分から溶けだしてしまうのではないかと錯覚するほどに、ドイツはとろけていた。
 どうする、と低い声が囁いてくる。プロイセンの肩口に顔をうずめたドイツの耳元に唇を寄せ、プロイセンはドイツの耳殻を唇でやわく食んだ。舌でゆるゆると撫で上げられ、ドイツはしがみついた腕に力を込めて体を震わせることしかできなかった。
「ほら、答えろよ。俺にいじわるされたい?」
 そう問うてくる声が、既にもう意地悪な響きを持っていた。急かすように、体内に埋められたドイツよりも少し細い指がぐにぐにと内壁を押す。ひくん、と震えて、ドイツはおずおずと首を縦に振った。
「分かんねえ」
 ジェスチャーだけでは許されないのだと告げられ、ドイツは気付けば真っ赤に染まっていた顔を上げて兄に縋りつきながらそっと唇を開いた。
「い、いじわる……されたい。兄さんに、いじわるなこと……たくさん、されたい」
「……っふふ、かーわいい」
 満足げに歪められた唇が、ドイツの羞恥に震える唇に一瞬だけ触れた。それを追いかけて顎を突き出したが、だめ、と短い言葉で制されてしまい、ドイツは不満そうに眉をしかめた。
「じゃあ、おまえの望むようにいじわる……してやんねえ」
「……え、」
「っはは! なんだよその顔、そんなに苛められたかった? 気持ちいこといっぱいされて、泣かされたかったのかよ。……でも、だーめ。俺はおまえのこと大好きで大好きでしょうがないから、今日はたっぷり優しくしてやるって、今決めた」
 いたずらの成功した子供のように、だめな大人が笑った。


「あ、う゛ぅ……っ、うあ、兄さん……っ」
「んー、もうちょい」
「だめ、もういやだ……ッ! ぁ、あ゛ぁ、そこ、もっとぐりぐりして、いっぱいぃ……」
 言葉でねだったとたんに、指がすべて体の中から抜かれてしまった。兄の上に覆いかぶさってうつぶせになった状態で、ドイツはずっと兄を受け入れる場所をぐにぐにと指でほぐされ続けている。後処理の簡単なローションを使用しているが、これの難点は乾きやすいところで、プロイセンは弟の体内をいじくっては少しでも滑りが悪くなると孔を苛む指を全て抜いてぬるぬるとぬめらせてからまたひろげるのだ。
 両手で尻の肉を掴まれ、こじ開けるように割られた中心に指を突っ込まれ、左右に拡げられる。誰にも見えない位置で行われているとはいえ、その屈辱的な格好にドイツの興奮はどんどん高まっていった。
「ゆび、ゆび…ぃ……ッ! ぁあ、ひろげないで、はずかしい……から、ぁ」
「はずかしい顔、可愛いよヴェスト。おまえの穴、真っ赤なんだろうな。ほら分かるか、指、抜くとさ……」
 うっとりと歪むドイツの顔を覗き込みながら、プロイセンは指を内壁にひっかけながらわざと音がするよう、ちゅぷん、と指を抜いた。
「ぁう、っ」
「ひくひくしてんの。入れたい? ここ、どろどろにさせられてる、おまえのやらしい穴に、俺のちんこ入れたいか?」
 割れ目の内側の肉を指がそろそろとなぞる。ちゅぷ、ちゅぷ、と空気の音を孕み、破裂させ、割れ目の間を指が行き来する。穴の上を指の腹が撫でて、ああ、とドイツが喘ぐと同時に指はそこを擦るだけですぐにいなくなってしまう。もどかしい刺激に腰が揺れるのをプロイセンが笑い、ドイツは顔を赤くして舌を出しながら兄の唇にむしゃぶりつこうとした。けれどプロイセンは喉を反らして顔を背けてしまったため、ドイツはプロイセンの顎に舌を這わせることしかできなかった。顎から喉仏まで舌を降ろしていき、ん、と兄が小さく声を上げたことにぞくぞくと震えた。
 兄の喉仏を舌の腹でぐにぐにと押し、少し苦しそうな声でそこが振動することに興奮した。
「ん、んふ……ぁう、んく…っ」
 ぴちゃぴちゃと唾液を押し付け、首の薄い皮膚に噛みついて吸い上げる。
 己の問いに答えなかったことが不服だったのか、プロイセンは懸命に自分の喉を舐めているドイツの腰をゆっくりと撫でた。ローションで濡れた指が腰から脇腹にかけてをつうっと撫で上げ、ドイツは身をよじった。
「ヴェスト、こら……違うだろ。おまえがキスすんのはこっち」
 促すようにとんとんと背中をたたかれ、ドイツが顔を上げるとすぐに唇に兄のぬくもりが押し当てられた。もう閉じることを知らない唇になまぬるい舌が捻じ込まれ、兄の舌先がドイツの舌先をくすぐる。そこに舌を差し出し、ドイツから強引に舌を絡ませていくと兄は少し身を引こうとした。身を乗り出してその舌を追いかけ、噛みつくように口を大きく開けて兄の口の中を貪った。
「ぁう……っ、ふぁ、あ゛ぁ……」
「っんー……ぁ、ヴェスト、こーら……ぅあ、がっつくなって」
「や、兄さん、もっと……」
「あー、うあ、ちょ……こらヴェスト、…ん゛ぅーッ!」
 ドイツがしつこくキスをねだると、プロイセンは眉間にしわを寄せて顔を背けてしまう。それでも追いかけて、かたく閉じられてしまった唇に唾液を塗り込むようにして舐め続けると、兄は苛立ったような目つきでドイツを見つめた。そのきつい目元にぞくぞくとした何かを感じたのもつかの間、ドイツの臀部を痛みと衝撃が襲ってきた。
「ぁ゛っ、!」
 身をすくめてプロイセンの唇からドイツの舌が離れた瞬間、プロイセンはドイツの髪に指を差し込み、金色を掴んで引き剥がすように引っ張った。整髪料でごわついた髪を引っ張られたことでドイツは首を反らし、強制的に兄と距離をとらされる。
「おまえね、ちょっと落ち着けって。兄さんは逃げねえだろ? おまえのわがままもちゃんと聞いてやるって言ってるんだから、あんま焦るなよ」
 乱暴にドイツの髪を掴んだ指をゆっくりとほどき、兄は笑った。その唇は、ドイツが塗り込んだ唾液で汚れていて、ドイツは自分の背筋がぞくりと甘く痺れるのをどこか遠くの出来事のように感じていた。
「ヴェスト、お返事は?」
 わざと声を高くして、子供に言い聞かせるようにあかい目が覗き込む。飴玉みたいな色をしたそれにむしゃぶりつきたいという衝動を必死で押さえながら、ドイツは小さく頷いた。けれど兄の許しは出ず、はあはあとまだ呼吸の整わない唇でそっと言葉を紡いだ。
「はい……兄さん、ごめんなさい…っ」
「うっし、いい子だ。いい子のヴェストには、ごほうびやろうな」
 その言葉と同時にドイツはプロイセンのほうへぐっと引き倒され、かぷりと噛みつくようにして唇を塞がれた。生温い舌が入り込んで、舌先がドイツの口内をぐるりと舐めまわす。その舌を追いかけてドイツも舌を伸ばすが、プロイセンのそれはドイツに捕まるまいと、ぬるぬると口内を舐めまわしながら逃げた。ぬちゃぬちゃぐぷぐぷ、いやらしい水音が頭の中に響く。
「ん、っぅふ、ぁ……あ゛ぅ、っん゛……ッ」
 苦しげに喘ぐドイツの口からは、時折泡立った唾液が零れ落ちて顎を伝う。ドイツは、ふたりぶんの唾液がぐちゃぐちゃに混ざり合って落ちるそれを、どうしてか、もったいないと思ってしまった。
 頭がぼんやりして、もっと、もっと、と本能が求めてやまなくなったころ、ドイツの口をふさいでいた赤い舌と赤い唇が、揃ってドイツから消えてしまう。
「っは、ぁ…はっ、はぁっ……にいさん、兄さん…にいさ…ん」
「もっかい聞くぞ。……ここ、入れたい?」
 ちゅぷ、と指がもぐりこむ。傷のある指の腹が、ぐにぐにと内側を刺激して、ドイツは唇を噛んで耐える暇もなく細くて高い声をあげてしまう。
 ――こんな声、みっともない。大きな体をした男が、こんな指先一つで泣き出しそうなほど気持ちよくなってしまうなんて。
 そうは思うものの、同時に『だって、兄さんだから』という言い訳も彼の中に浮かんでくる。自分の中に指を入れて、ぐちゃぐちゃと掻きまわしているのは、兄なのだ。かわいくて、大好きで、どうしようもなく愛しい、兄だ。その兄に触れられて、感じるようになってしまったところをたくさん擦られて、それで気持ち良くならないほうがおかしい。だって、兄さんが好きだから。
 甘えた、筋の通らない言い訳をしながら、ドイツは何度も頷く。自分の顎を伝い落ちるふたりぶんの唾液を親指で掬い上げ、口に含んで飲み下して、にいさん、にいさん、と情けない声で何度も兄を呼んだ。至近距離でにっこりと笑うプロイセンの頬や口元に舌を伸ばし、餌をねだる犬のようにぺろぺろと舐める。
「いれたい、…い、れて…っ、兄さんのペニスで、ここ、……ぁ、あ、兄さんの指でどろどろになった、俺の…あ、穴に突っ込んで、いっぱいきもちよくして、くれ……っ!」
 兄さんの唇が欲望を孕んだ笑みの形に歪み、ゆっくりとJaを発するまでのさまを、ドイツははあはあと熱い吐息を落としながら見つめていた。


「ッぐ、ぁあ、あ……ッ、はいる、にいさ、っの…、あ゛っぁ……かたいの、入ってくる……ぅッ!」
 仰向けに寝そべるプロイセンの腹を跨ぐようにのしかかり、体をやや前屈みに倒して先端を割れ目に押し付ける。ぐに、と肉が触れ合う感覚と今後訪れるであろう幸福感を想像して、背筋が震えた。
 プロイセンの体の両側に手をつき、腕を突っ張って体を少し下にずらす。兄の指が何度も行き来したそこが押し広げられ、自らの意思で体内にそれを埋め込んでいることから満たされる支配欲に、ドイツは恍惚とした表情で喉を反らせた。体に侵入してくる、いとしい異物。
「ッあ、あァ゛ぁぁー……っ! ん、ぁァ…っはは、あつ…い……」
 くびれの部分までを飲み込むと、ドイツは唇をつり上げて笑みのような形を作り、ゆっくりと体を起こした。そのまま腰を落とし、体重をかけながら肉を飲み込んでいく。うすく開いた口からは粘度の低い唾液が垂れ、ぽたりとプロイセンの腹に落ちた。
 天井を向いて口をひらき、はーっ、はーっ、と大きく呼吸を繰り返す。体内を駆け廻るものを拡散させようとするような行動をとる弟を見上げ、プロイセンも眉根を寄せて快楽に耐えていた。
 限界ギリギリまで足を開いた足に力を込め、ほんの僅か体を浮かせてから腰を落とす。それだけで全身にしびれるような愉悦が駆け巡り、ドイツは歯を食いしばってきつく目を閉じた。
「ン゛ぅ゛ぅぅーッ! んぐ、ァ゛……ぁ、あ…っ」
「ぁ、ん……っ、ヴェスト、つらいか?」
 下から見上げてくる兄の心配そうな視線に、ドイツはかたく瞑った目を開いて視線を絡めた。つらいか、と、プロイセンは尋ねた。彼がよくしてくるこの質問にどう答えればいいのか、ドイツはよく理解していた。
 震える息を吐き出しながら、ドイツは口元を笑みに歪ませたまま、大きく一度頷く。
「つらい、……き、気持ちよくて、ん゛ぐっ…つ、つらいんだ……くるしい、兄さん…っ!」
 泣き出しそうな顔で、震える声で、ドイツは兄の言葉を肯定した。つらい、くるしい、と言葉を落とすと、プロイセンは性行為の最中とは思えないほどにうつくしく笑った。
「そっか、つらいか」
 途端、ぐっと下から激しい突き上げを感じ、ドイツは喉をまっしろに反らせて悲鳴を上げた。
「ひ、ぃあ゛あぁぁーッ! あ゛ーっ、にいひゃ…ッぎ、ぃ…ッ! あ゛ッ、ぁあ、く、くるし……っ、」
「嬉しい、っだろ……、はぁ、ほら……おまえも動け、よ…っ!」
 ぐずぐずと下から押し上げられる快楽に、反らせた喉から悲鳴じみた嬌声が迸る。
 兄の問いにJaと答えたら更にきつく攻め立てられることを、ドイツは知っていた。知っていたし、それを望んでいたのもドイツ自身だ。きつく、強く、真っ白になるほどに強い波。おそらくプロイセンもドイツが『そう』望んでいることを知っていて、わざと意地悪な問い方をし、彼に答えさせる。ある種お決まりのようなこのやりとりを彼らは楽しんでさえいた。
 ドイツは足と腕に力を入れて体を持ち上げようとしたが上手くいかず、せめて下から揺さぶられる体を倒さないように支えることしかできなかった。催促するように腰のあたりをプロイセンの手のひらで撫でられ、そこから流れ込んでくるひんやりとした心地良さにも、細く声が上がった。
 ほら、と今度は声で急かされ、下からの突き上げを弱められて、ドイツはぜえぜえと荒い息を吐きながら腰を少し前に突き出すように動かし始めた。重たい尻を兄の下腹部に付けたまま前後にゆるゆると腰を動かして、なんとか快楽を搾り取ろうとする。
「っ、ふぅ゛ぅ……ッ、あ…にいさん、兄さん…ッあ゛ぁ、はぁ…はー…ッ、きもち、い、ぃ゛……っ!」
「ヴェスト、……かっわ、い…はは、ほんっと可愛いなあ……好きだよ、ヴェスト…っん、あ…」
 かわいい、かわいい、と聞きなれた声が聞きなれた言葉を紡ぐ。ドイツは幼いころから何度もこの声に『かわいい』と、『好きだ』と、言われ続けてきた。
 可愛い子。俺の可愛い弟。大切な王様。可愛い可愛い、愛しいヴェスト。何度も言われた言葉。そして、兄以外からは一度として言われたことのない言葉。幼かった頃ならまだしも、この大きく成長した体を抱きしめて『かわいい』と言えるのは兄だけだと、ドイツは思っている。
 兄が紡ぐこの言葉は、驚くほどすんなりとドイツの中に落ちて、すとん、と収まる。そこにあることが当然であるかのような感覚を伴い、少しむず痒いような、気恥ずかしいような、それでいて幸せな温かさをくれるその言葉が大好きだった。兄がくれる言葉が嬉しくて、しあわせで、大好きで、ドイツはぎゅっと噛み締めたくちびるをほどいて、体を少し前に倒した。兄の、プロイセンの荒くなった呼吸が肌に触れる。
「に、いさ…ん、兄さん、にいさん……っふ、ぅっく…」
「んっ、……ヴェスト、」
「兄さん、もっと……も、もっと…ッ!」
 かくかくと震える足に力を入れて、ぐちゅぐちゅ音を立てながら必死で体を上下させ、ドイツはただもっと、もっと、と子供のように拙い言葉でねだった。プロイセンは口元にわざと意地悪な笑みを浮かべ、どうした、と押しつぶした声で問う。プロイセンはドイツが自分のこのサディスティックな色を含んだ声を好んでいるのを知っていたし、そうすると少し困惑したような表情を見せる弟が好きだった。
 しかしプロイセンの予想は、外れることとなる。
 ドイツはプロイセンの腹について突っ張っていた腕の力を緩め、くたりとプロイセンの胸元に倒れ込んだ。その手をそっとプロイセンの頬に触れさせ、にいさん、と小さく呼ぶ。そうして手で触れた方とは反対の頬に自分の頬を寄せ、すりすりと小動物が甘えるような仕草で、兄さん、ともう一度呼んだ。
「言って、くれ……っ! 兄さん、俺のことすきって、っう、ぅ…か、かわいいって、すきって…ァん、っくぅ゛ァ……もっと言って…!」
 ドイツは言葉をねだった。プロイセンが惜しみなく与えてくれる愛情という目に見えないものを、言葉という直接的なものでねだった。
 好きって言って。可愛いって言って。俺のこと、一番だって言って。子供がねだるような稚拙な言葉で、表現で、精一杯兄から自分の望む言葉を与えてもらおうと、ドイツは兄の頬やまぶたに何度もキスをした。けれど唇にだけは触れず、ただ、そこから言葉が紡がれるのを待った。
「…、すき、だよ。ヴェスト……一番だ、可愛いヴェスト。愛してる、可愛い、可愛い……俺だけの、かわいいヴェスト」
 甘く、やさしい声だった。ドイツはプロイセンの低く荒々しい声も、意地悪な声も、高く跳ねるような声も大好きだったが、この穏やかで甘い声が一番好きだった。耳元に直接声が触れ、吐息が触れ、プロイセンの手がゆるやかにドイツの背に回された。
 プロイセンの指がドイツの背に食い込み、強く押さえられたと思ったらぐるりと世界が反転する。あっという間にシーツに背を押し付け、蛍光灯の光を背負ったプロイセンが覗き込むように見下ろしていた。一度まぶたの上にキスを落とされ、反射的に目を瞑った瞬間、ぐっと腰を押し付けられてドイツの喉が反りかえった。
「ひぐ、ッあ゛ぁぁ! ぃ、ァあ…あ、あ゛ッ、あ゛ッ……!」
「っ、たく……いつまでたっても、甘ったれのガキなんだからよ…! ああ、もう、……っ、ァあ、おまえが可愛くて仕方がないよ、俺のヴェスト……!」
 ドイツの脇とあばらの間に手をついてぐずぐずと抉るようにドイツの腹の中を刺激するプロイセンに、ドイツは慌てて手を伸ばした。プロイセンの首に手を回して縋りつくように引き寄せると、プロイセンは言葉ないドイツの懇願を察して、ゆっくりと唇を押し当てて口内をぬるりと舌で撫でた。
「んく……ぁふ、んぅ…は、ぁっ、あっ、にいさん、兄さぁん……っ!」
 すぐに離れて行ってしまった唇を名残惜しげに見つめ、ドイツは荒い呼吸の中で何度もプロイセンを呼んだ。そのひとつひとつにプロイセンは頷き、相槌を打つように額にキスを施していく。そのたびにドイツは嬉しそうに目を細め、唇をほころばせた。
 ゆるゆると腰を動かされるたびにドイツの口からはぼろぼろと甘い音が零れ落ちて行く。ずるりと内臓ごと引きずり出されるのではないかと馬鹿げた錯覚に陥るほど勢いよく引き抜かれたかと思えば、焦らすように浅い部分をぐちぐちと刺激してくる。くすぐったがるような上ずった声を漏らした直後、ぐぶ、と空気を押しつぶしたような音を伴って深く深くまで押し込められ、ドイツは喉が裂けてしまいそうなほどに引き攣れた声で叫んだ。
「ぃっぎ、ぁ゛あぁぁぁッ! あ゛っ、あ゛ァァーっ! に、ぃひゃ…っんぅ゛ッ、あ゛ッ、すご……きもちいい、ッんぐ、ぅっ、にいさんたすけ、ッあ゛ぁ……!」
 たすけて、くるしい、と呼吸がうまく行えているのか自分でもわからないような乱れ切った声で切れ切れに紡ぐ。苦しいほどの快楽を与えてくれるのは兄で、その兄に助けを求めているという矛盾にドイツが気づくことなどないのだろう。ドイツが追い詰められたときに助けを求めるべきは兄で、目の前にその兄がいるのだから縋りつくのは彼にとって当然のことだった。
 プロイセンは自分に縋りついてくる弟を愛しげに見下ろしながら、ぺたりと皮膚を隔てて心臓を重ね合わせるように胸をつけた。同時にドイツの中を抉る動きが早まり、ドイツは目を見開いてプロイセンに縋る腕の力を強めた。
「ひっぎ、ァ゛ぁーっ、あ゛ぁ、にいさっ、にいさん兄さんっ…ひァ゛ぁ、っぐァ、あ゛ッ、いっ、いく、にいさんっいきそ、……ぉ゛っ!」
 ドイツのあおい目は、濡れていた。涙が落ちていることに、ドイツ本人が気付いたのは少ししてからだった。ああ、ああ、とだらしなく声を上げながら、大きく開いた口からはどろどろと唾液を零し、涙で目元をべしゃべしゃに濡らしたみっともない姿。この姿を兄に見せたくないと思う気持ちと同時に、兄ならばこんな自分でも変わらず愛してくれるだろうという確信が、ドイツにはあった。
「にいさっ、……あぁ、さわって、擦って…ぇ゛ッ! 出したい、もう、あ゛ァ…っ! にいさんっ、にいさんっ、おねがい……お、俺のおちんぽぐちゅぐちゅって、…あァん゛ッ、こすって……ぇ゛ッ!」
「っは、はぁっ……んだよ、イくのか? 俺の手で擦って欲しい?」
「あぁ゛ッ、して、して…ぇっ! にいさ、っ、兄さんの手にザーメン出したい……ッ、ぁあ゛ぁーっ、にいさんにいさぁ、ぁ゛んっ!」
 首を振って、くしゃくしゃに乱れた髪でシーツを叩きながら何度も兄を呼び、懇願するドイツの性器にプロイセンの指がゆるりと絡められた。びくんっ、と肩をすくませ、嬉しそうに唇をゆるませて、ドイツは兄にしがみつく力を少しだけ弱めた。
「ぃぐ、ぁあーッ! にいさっ、兄さんっ、あぁ゛ーっ、きもち、い…きもひ、ぃ゛ーっ、らぇ゛っ、らめぇ゛ッ! い、いっひゃ……ぁう、いく、いぐぅっ…あ、あッ、あ゛ッ……ッん゛あぁ゛ーっ!」
 持ち上げられた足の先が白くしなり、ドイツは性器を擦り上げるプロイセンの手のひらを、白くねばついた精液で汚した。幾度かびくびくと緊張させた体が弛緩し、けれど止まない兄の律動に、ドイツは混乱したように兄の頭をかき抱く。
「あ゛ぁぁっ、らめ、らめぇ゛……っ、にいさんっもぉ、イって、俺の中にザーメンら゛ひてぇ……っ!!」
 呂律の上手く回らないまま、出して、イって、とプロイセンの細い髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜて、ドイツは懇願するような声を上げた。プロイセンはそれを無言で返し、ドイツの鎖骨に乱暴に歯を立てながら突き上げる。痛みを与えられて更にびくびくと収縮を繰り返すそこにプロイセンの精液が注がれ、ドイツは恍惚とした表情を浮かべて背をのけぞらせた。
「っんぁぁーっ、にいさっ、の……あ゛ぁ…出て、る…ザーメン出てる…ぁ、あっ、あぁ……っ…」
 くたりとドイツの両腕から力が抜け、シーツの上に落ちる。ゆるやかに目を閉じて、ドイツはぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。その乱れ切った呼吸の中でも、にいさん、にいさん、とプロイセンを呼び続け、それに応えるようにプロイセンの唇がドイツの頬に触れた。
 ドイツと同じか、それ以上に息を乱しながら、プロイセンは弟の体内から萎えた性器をずるりと引き抜く。あ、と残念がるような細い声を上げてしまったことに、ドイツ自身が少し恥ずかしそうに薄く目を開けて兄を見上げた。くすくす笑うプロイセンと目が合い、ドイツはぷいと横を向く。
 ドイツの顔が向いた方にプロイセンがごろりと寝転がり、ぎゅっとドイツを抱き寄せてまだ整わない息を吐き出す唇同士を重ね合わせた。
「ん、んふ……っ、んぅ…」
「っんぁ……かわいい、かわいいなあヴェスト……」
「ぁ、う……あ、あまり言わないで、くれ…」
 抱きしめられた腕に収まりきらない体を縮こまらせて、ドイツはプロイセンの胸元に額を押し付けるようにして顔を伏せた。耳が少し、赤く染まっている。
「んー? なんだよ、さっき自分で言ったんだろ? 可愛いって言って、好きって言って、ってさあ」
 からかうようにくすくすと笑い、プロイセンはドイツの頭のてっぺん辺りにキスを落とす。ぽんぽんと背中を軽く叩かれ、ドイツは赤く染まった目元でじろりとプロイセンを見上げると、兄の目元も薄く赤に染まっていたことにドイツはきょとんと眼付の悪い目を丸くした。
 照れくさそうに笑うプロイセンは、今度はドイツの額にキスを落とす。
「俺はな、ヴェスト。おまえが可愛くてたまんねえんだよ。わがままで、甘ったれで、自分の限界も分かんねえで根詰めすぎるようなガキのおまえがさ、……好きでたまんねえんだよ」
 確かないとしさがたっぷりと詰まった、言葉だった。
 ドイツはゆっくりと吐きだされるその言葉を噛み締め、飲み干し、ひどくしあわせそうな顔で笑ってプロイセンのあかい目を覗き込む。
「……好き、なんだ。兄さんが、プロイセンが、……だいすきなんだ。甘えたい、わがままを言って困らせたいと思うのは、あなただけだ」
「そ、っか。……そっか、ほんとに仕方ねえな、おまえは」
 嬉しそうに、幸せそうに綻んだプロイセンの唇が、甘い溜息をついた。




.end





































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 もっと短くまとめたかった。




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